本当は幸せになれたロミオとジュリエット

マキューシオが余計なことさえしなければ・・・

シェークスピアの悲恋劇「ロミオとジュリエット」を見た人は、その終末の悲しさと二人の愛に感動し、家同士が仇敵だったばかりに、愛する若い二人にこのような悲劇がと感じ、家同士の政略結婚で愛する二人を引き裂く封建時代て嫌ね〜とか思うわけだが、実は違うのである。

確かにキュピレット家とモンターギュ家は以前から敵対していたが、ベローナ大公を始めとして、ロレンス修道士など両家を和解させたい人は多く、当時、家同士が和解する場合は、その一員同士が結婚するのが普通だったから、ロミオとジュリエットが結婚できる可能性は十分あったのである。乳母もそう思って協力していた訳で、せっかくロミオがティボルトの挑発にも自重したのに、空気の読めないマキューシオが喧嘩を買ってしまい、しかも勝って罪を被るならまだしも、むざむざ殺されたため、思わずロミオが仇を討って追放されることになったわけだ。

ジュリエットはロミオの追放をそれ程、悲しむ必要はなかったのである。

彼らの結婚の可能性があると言っても、その前に両家が長年の確執を捨てて和解する必要があり、それが無いまま秘密結婚したことがバレれば、状況は一層悪くなる。むしろ、ロミオが追放されてベローナを離れるのであれば、駆け落ちして一緒になり易いのである。

キュピレット氏はティボルトの死後*1、娘が悲嘆していたため、元気付けるつもりで、パリス伯爵との結婚を早めたわけで、本来は数年後と考えていたのである。ジュリエットが家長である父親の意思に服従しないから、怒って、さらに結婚を早めたのだが、結局、結婚しないのなら縁を切ると言っているだけだから、勘当されてしまえば、駆け落ちしても追っ手も掛からずロミオと一緒になれただろう。

*1 ロミオとのことを知らないので、従兄弟のティボルトの死を悲しんでいると思っていた。

ロレンス修道士がもう少し段取りの良い人なら・・・

さらにもう一人の戦犯はロレンス修道士で、怪しげな薬*2を使って拙い計略を企てるから、誤解で二人とも死んでしまったのである*3。如何に時間が無かったとは言え、これだけの危険な計画に他に協力者を用意しないのは無思慮であろう。

*2 ボルジア家のカンタレーラのように、まことしやかな様々な毒薬の噂が常に存在した
*3 さらにパリス伯爵も無駄に死んでいる。

一体、何時、ジュリエットの亡骸を持ち出すつもりだったのだろう?葬儀前に運び出すのは難しいだろうから、墓所への安置の後*4に眼を覚ますのを待つつもりだったと思われるが、その間に予想外の出来事が起こる可能性は高いため、せめて乳母でも協力者にして、ジュリエットの死体を安全に保つよう監視する必要があっただろう*5。

*4 火葬が中心の日本では思いつかない発想だが
*5 実際にパリスやロミオといった闖入者がいたわけで、乳母が見張っていれば悲劇は避けられただろう。

そもそも、そんな危険な方法*6を取る必要があっただろうか?ジュリエットがロミオと恋仲で秘密結婚していたことは乳母やロレンス以外は知らなかったはずで、結婚前とは言えジュリエットの監視は厳しくはなかっただろう。乳母と結託すれば街の外に出てロミオと駆け落ちすることは難しくなかったように思われる。

*6 その薬で本当に生き返るのか、身体の小さい若い女性への適量などを確認した使用例があるのか疑問は山積みである。

むろん、家長の意思に逆らった駆け落ちには追っ手がかかる*7可能性があるが、しばらく旅を続ければ、ほとぼりを冷ますこともできるだろう。

ロミオは不名誉なことをして追放された訳ではないため*8、モンタギュー家から援助を受けられるだろうし、他の地で身を立てることは可能だったろう。

*7 女性側の親族が侮辱として男性を殺そうとする。現在でもインドやイスラム社会の一部では名誉殺人としてしばしば実行されて問題となっている。
*8 決闘により相手を殺害することは少しも不名誉ではなく、むしろ一族の名誉である。

しかし、考えてみると、この2人の恋愛は若気の至りではないのか?ジュリエットはせいぜい14歳の子供で、ロミオは元々ロザリーヌに片思いしており、彼らは舞踏会で出会い、窓辺で短い会話をしただけで、秘密結婚を挙げて、追放前に交接を完了してしまった訳だが、ほとんどお互いを知り合っておらず、頭に血が上っているだけではないだろうか。一旦、パリスとの結婚を延期させ、女子修道院で預かることにすれば、その後に色々な手が打てただろう。

大人であるロレンス修道士は、もう少し分別のあるアドバイスをすべきだっただろう。

結局、無思慮なマキューシオと無分別なロレンス修道士がいなければ二人は幸せになれたのではなかろうか?

ちなみに、13世紀にキュピレットとモンターギュは実際に争っており、ダンテの神曲の「煉獄」において、「終わりない闘争の罪」の例として挙げられているそうだ。モンターギュはベローナの政治派閥だが、キュピレットはクレモナの一族で、ロンバルディアに跨る抗争だったそうだ。

イタリアのラブストーリをイギリスのアーサー・ブルックという詩人が翻訳し、それをベースにシェークスピアが翻案したらしい。

シェークスピアは特に具体的な時代設定はしていないが、当然、ルネッサンス期を想定しているだろう。

* この記事は半分エプリルフールの冗談ですが、時代考察などは真面目です。

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